顧問
東京大学名誉教授
略歴
1952年生まれ。1983年東京大学人文科学研究科博士課程中退。博士(文学)。現在東京大学総合研究博物館館長/教授(博物館工学/美術史学)。
主要著書: 『十五世紀プロヴァンス絵画研究』(1994年、岩波書店)、博物館工学三部作『博物館学』『大学博物館』『二十一世紀博物館』(1995年、1996年、2000年、東京大学出版会)、『装釘考』(2000年、玄風舎)、『ミクロコスモグラフィア講義録』(2004年、平凡社)、『チェコ・アヴァンギャルド』(2006年、平凡社)、上田義彦写真集三部作『CHAMBER of CURIOSITIES ―from the Collection of The University of Tokyo』『 ONE HUNDRED STONEWARES』『BIOSOPHIA of BIRDS(鳥のビオソフィア)』(2006年、2008年、2008年、東京大学出版会)、『西洋美術書誌考』(2009年、東京大学出版会)。他に共著書・翻訳など多数。
展覧会企画・図録: 『東アジアの形態世界』、『歴史の文字』、『学問のアルケオロジー』、『真贋のはざま』、『チャペック兄弟とチェコ・アヴァンギャルド』、『マーク・ダイオンの「驚異の部屋」』、『プロパガンダ1904-1945―新聞紙新聞誌新聞史』、『グローバル・スーク』、『モバイルミュージアム』、『東京大学コレクション―上田義彦のマニエリスム博物誌』、『鳥のビオソフィア―山階コレクションへの誘い』、『維新とフランス―日仏学術交流の黎明』など。
受賞: 渋沢・クローデル賞(1994年)、竹尾賞(著者賞・デザイン賞)(2008年)、ディスプレイデザイン賞(最優秀賞・朝日新聞社賞)(2008年)
研究活動
1)実験展示の推進
学内に蓄積されている様々な学術標本を、従来の専門分野と異なる角度から眺めることで、個々の標本に内在された潜在的な価値を掘り起こすことを狙った、各種の特別展示の企画立案とその実現を行っている。モノ世界と情報世界が程好く調和する空間の構築、展示における機能的・審美的な伝達の可能性の探究、展示手法の21世紀的なあり方の創造などが研究課題としてある。
2)「博物館工学」(ミュージアム・テクノロジー)の研究と理論化
博物館のあり方を、法制度、行政システム、施設設備、建物、運営、学術研究、社会生活、情報蓄積、スペクタクルなど、様々な角度から再検討し、博物館に関する学術知・技術知・実践知のすべてを総合的に把握し議論する新しいディシプリンの確立を目指している。この研究の成果の一部は『博物館学』『大学博物館』『21世紀博物館』の三部作(東大出版会)ならびに、「東京大学コレクション」展シリーズをはじめとする展示図録、来館者調査報告書に纏められている。
3)情報化の推進
博物館に蓄積された学術標本のデジタル情報化を推進すると同時に、個々の標本の属性に応じた情報化手法の開発と、デジタル・アーカイヴ・システムの近未来的なあり方(学誌財グローバル・ベース構想など)の研究開発を行っている。
4)文化財保存科学の研究
西欧中世後期のキリスト教図像学、なかでもフランス南部のプロヴァンス地方で生み出された祭壇画について、フランス文化コミュニケーション省と協働で、組成や年代について科学解析の研究、さらには文化財修復の手法の研究を行っている。この研究の成果の一部は『2003-2006年度科学研究費基盤研究(A)(一般)研究成果報告書』で公開されている。
5)美術文献学の研究
西洋美術史学と深い係わりのある古刊本(16世紀初から18世紀末)を収集し、それらの文献学的な記載を行っている(現在数約2,000件)。また同様に、20世紀アヴァンギャルド芸術運動関連紙誌(現在数約400タイトル)、日本の近代美術雑誌(現在数約100タイトル)についても、それぞれ収集を行い、文献学的な記載を行っている。この成果の一部は『装釘考』、『アヴァンギャルド紙誌考』『チェコ・アヴァンギャルド』として出版された。
6)出版印刷文化の研究
近代日本の成立になくてはならなかった活版印刷技術の成果として、明治から昭和初期にかけての印刷物の研究を行っている。また、同時に、近代活字、活字母型、印刷機など、活版印刷関連史資料の収集を行っている。この成果は本館の『歴史の文字』、『真贋のはざま』『プロパガンダ1904-1945――新聞紙・新聞誌・新聞史』展に生かされた。
7)地方自治体における文化施設リニューアル事業のあり方の研究
滋賀県、長野市、青森市など、地方自治体の直轄経営ないし公設民営経営になる博物館施設・文化施設のリニューアル事業について、博物館の将来像、来館者調査の結果などを踏まえて、どのような可能性があり得るかを研究している。
8)大学博物館における研究成果の学外へのアウトソーシングの方法についての研究
実験展示等を通じて得られた研究成果を、展示パッケージ、産学連携、民間主導企業メセナ、ボランティア活動などを複合しつつ、社会還元する手法について、学外ミュージアム施設との連携のなかで具体的に実践試行する研究を行っている。現在、産学連携事業「モバイルミュージアム・プロジェクト」、国際学術連携事業「アジア圏学術標本ネットワーク構想」として具現化しつつある。