「インターメディアテク」は、日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館(UMUT)の協働運営になる公共施設であり、学術の普及と啓蒙を通じ、社会へ貢献することをその使命としています。
この施設には、東京大学が明治10(1877)年の創学以来蓄積に蓄積を重ねてきた学術標本が常設されています。展示に用いられているケースやキャビネットは、大方が教育研究の現場で使われていたものです。帝大時代のものが多く、それらのかもし出す重厚な雰囲気に、19世紀へタイムスリップしたような気分にとらわれる方もあろうかと思います。ですが、われわれの狙いは、博物学の全盛期であった19世紀から高度情報化を実現した21世紀まで、三世紀にまたがる時代を架橋することにあります。来るべき時代の精神がこの先もなお見失ってはならない「世界の眺望」を提示してみせること、それがわれわれの企図するところなのです。
ミュージアムは、これまで文化財の保管庫であり、列品の場所であると考えられてきました。しかし、そうした機能を充足していただけでは、21世紀の社会的な要請へ十全に応えることができなくなっています。現代のミュージアムは、われわれ人間が自分たちを取り巻く世界をどのように受け止めてきたのか、その俯瞰的な眺めを末永く存続させるための場所であるというだけでなく、そこに集められたモノやコレクションからどのような新しい知見や表現を導き出すことができるか、その可能性を探求し、提示する場所でもなくてはならないのです。それを、多様な表現メディアの対話を通じて試みる実験のアリーナ、それが「インターメディアテク」なのです。
歴史的な学術標本は、たしかに過去の遺産です。しかし、同時にそれは、われわれが現在から未来に向けて活用すべきリソースでもあります。このことを実証してみせるべく、われわれは歴史的な遺産を可能な限り収集し、それらを現代のニーズに叶うよう、装いを改めて再利用することにしました。資源獲得やエネルギー供給に限界が見え始めた現代社会にあって、蓄積財のリ・デザイン活用は人類にとって喫緊の課題のひとつであるといっても過言でありません。そうした認識に立って、われわれは先端的なテクノロジーと伝統的なモノ作り技術の融合を図りながら、今後の活動と取り組んでいくことになります。われわれが謳う「Made in UMUT」の掛け声には、来るべき世代に向けてのささやかなメッセージが込められているのです。
「インターメディアテク」が、多くの方々に愛され、その支援にささえられ、発展しますことを念じてやみません。
インターメディアテク初代館長 西野嘉章2013年3月