2020.06.15-2020.07.14
DIGITAL
主催 東京大学総合研究博物館
協力 梅田英喜+マック杉崎
企画構成 東京大学総合研究博物館インターメディアテク研究部門
インターメディアテク内階段教室「ACADEMIA」にて、蓄音機音楽会を定期的に開催しております。「湯瀬哲コレクション」から1920—1940年代ジャズの名盤を厳選し、名機E.M.G.社「マークIX」をはじめとする様々な蓄音機で再生し、今やパブリックな場では鑑賞できない音の醍醐味を共有する機会を設けてきました。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、蓄音機音楽会の収録をデジタル配信します。
戦後、ビバップの旋風を受けたジャズ界は岐路に立っていました。「モダンジャズ」の方向性をめぐって、スウィングを受け継いだ商業的なダンスミュージック、自由な即興を基軸とした前衛、そしてクラシック音楽との融合を目指した「第三の流れ」を提唱するミュージシャンが対立し、「ジャズ」そのものの定義が再び問題となったからです。その中で、ヨーロッパ古典音楽の教育を受けたジャズ・ピアニストのジョン・ルイスは独自の道を拓きます。ガレスピー楽団とともにビバップの真髄を体現した後、自身の作曲と編曲にクラシックの技法を活かし、曲の構成、バンドのリズム感や即興のあり方を刷新しました。デビュー録音から伝説の「モダン・ジャズ・カルテット」の設立まで、ルイスが黒人作曲家の系譜を受け継ぎ、ジャズの発展形を描いたプロセスをオリジナルのSP盤で振り返ります。
蓄音機音楽会シリーズについて
「言葉をしまって置く機械」、「写話器機」、「蘇定機」、「蘇音器」― 音を録音し、それを無限に再生する仕組みが発明されてから、それが普及し、「蓄音機」という名称が定着するまで数十年かかりました。発明当時の人々は、音を発するこの謎の家具に関心を持ち、時には恐怖に襲われるほど当惑したといわれています。しかし、LPレコード、CD、そしてデジタルファイルの普及とともに、蓄音機は廃れ、ミュージアム等に残っているものはただの展示品となっています。本音楽会は、蓄音機を再生装置として再び活用し、機械がもつ本来の可能性を新たに味わうことを目的とします。
東京大学総合研究博物館は様々な蓄音機を所蔵しています。音楽会では、蓄音機を用いて、レコードをはじめとする様々な音楽記録媒体を再生します。その中で最も貴重な音源が、2012年に総合研究博物館に寄贈された「湯瀬哲コレクション」です。ジャズを中心としたこの個人レコードコレクションには、一万枚のSP盤が含まれています。湯瀬氏が生涯に亘って形成したコレクションを最高級の蓄音機で再生することによって、希少な名盤を紹介すると同時に、デジタル時代とともに失われた「音」の厚みと奥行きを改めて共有したいと思います。ストリーミングの時代に、インターメディアテクの階段教室に集まり、昔ながらの音楽会を体験することによって、ミュージアムを「共感覚」の場に転換する企画となるでしょう。