JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

特別展示『石の想像界――アートとアーティファクトのはざまへ』

2018.09.26-2019.01.27
GREY CUBE

 インターメディアテクにおける「アート&サイエンス」の新しい実験として、フランス人アーティストのユーグ・レプとの共同企画により、「石」を巡って現代美術作品と学術標本とを組み合わせた特別展示を開催いたします。現代美術家は石という素材を通じて自然界および学術への新たな突破口を探りつつあります。その背景と全貌を明らかにすべく、本展示では、国内外のコレクションから各分野の学術標本、そして日本で紹介されることが少ない現代美術作品約100点を一堂に集わせます。自然・学術・美術という異なる領域および時間層に属する様々な「石」が会場に混在するなか、石という天産物に造形と機能が与えられ、歴史的な意味と社会的な価値が付与される過程をご覧ください。

主催 東京大学総合研究博物館
協力 アニエスベー財団・基金 + 横田茂ギャラリー
後援 ヴァン クリーフ&アーペル + 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ パリ本部


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企画趣旨

 石は人間にとって最も縁遠い自然物のひとつです。アリストテレスに遡る伝統的な分類において、鉱物界は動物界と植物界と並んで自然界の主要な構成要素でしたが、そのなかで石は唯一、人間を囲む生命の域から乖離した存在として見なされていました。人間の想像を絶する地質学的時間性のなかで生成された無機的な鉱物は、その硬い材質と複雑な構造から、時間の経過に耐えうる材料として彫刻および建築で使われてきました。無形の大理石の塊は、人間の彫刻によって初めて、人類の文化遺産を象徴するミロのヴィーナスになりうる訳です。ところが、シュルレアリスムの詩人アンドレ・ブルトンが論考「石の言語」で予言したように、20世紀半ばから石の位置付けが、芸術作品の「材料」から「主題」へと著しく変化しました。個々の石が有する複雑な構造と独自の様相が、彫刻家をはじめ美術家の造形的探求を導くようになりました。そして現代美術においては、石そのものが自然のしるしとして、未加工の状態でいわば「レディメイド」のように作品に使用され、その独特の質感が抽象的な表現を生み出しました。鉱物界の系統的な究明を目的に収集された鉱物学標本、人類による自然物加工の最古の証拠として産出した先史時代の石製標本、そして石の「想像界」を探求する現代美術作品。これらの「石」は用途および社会的文脈によって特定されるため、その様相だけでは区別できない場合があります。実際、石器を使用した、もしくはそれを模した現代美術作品も少なくありません。学術標本と美術作品とを対照させる本展示は、現代人にとって「石」という存在とその独特の造形美を再確認すると同時に、物質の意味や価値など、現代美術そのものを特徴付ける美学的プロセスを再考する機会となります。


展示作家

和泉正敏(1938-)
アポロ・プロジェクト[NASA]
アブデルカデール・ベンチャマ(1975-)
ミシェル・ブラジー(1966-)
ブラッサイ[ハラース・ジュラ](1899-1984)
フレデリック・ブリュリー・ブアブレ(1923-2014)
メラニー・カウンセル(1964-)
フランソワ・キュルレ(1967-)
ダニエル・デワール(1976-)&グレゴリー・ジッケル(1975-)
ミモザ・エシャール(1986-)
ローラン・フレックスナー(1944-)
ミシェル・フランソワ(1956-)
ピエロ・ジラルディ(1942-)
モナ・ハトゥム(1952-)
ヴァレリー・ジューヴ(1964-)
ジャック・ジュリアン(1967-)
アンドレ・ケルテース(1894-1985)
ヘレン・レヴィット(1913-2009)
ロベール・マラヴァル(1937-1980)
ディディエ・マルセル(1961-)
ライアン・マックギンリー(1977-)
マチュー・メルシエ(1970-)
マルセル・ミラクル(1957-)
シャルロット・モフ(1978-)
ジャン=リュック・ムレーヌ(1955-)
ガブリエル・オロスコ(1962-)
ジグマー・ポルケ(1941-2010)
ユーグ・レプ(1964-)
エヴァリスト・リシェ(1969-)
ジャン=ミシェル・サネジュアン(1934-)
フランク・スクルティ(1965-)
シグルドゥール・アルニ・シグルドソン(1963-)
ファビオ・ヴィスコリオージ(1965-)


主な展示コレクション

東京大学総合研究博物館(鉱物学/先史人類学/先史考古学)
アニエスベー・コレクション(現代美術)
各プライベート・コレクション(現代美術)

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