2015.06.27-2015.07.26
FIRST SIGHT
東京帝国大学文科大学に美術史を研究するための講座として「美学第二講座」が創設されたのは1914(大正3)年2月のことであった。1889(明治22)年に岡倉天心(1863-1913)の主導で創刊された美術研究誌『国華』の主幹を務め、1909(明治42)年から文科大学で日本絵画史を講じていた瀧精一(1873-1945)が初代教授職に就いた。「複製」や「模写」が美術史研究において重要な役割を果たし得ると見た瀧は、美術史講座の基礎固めの一環として、写真版の収集や模写の制作に力を注ぐことになった。明治44年9月に京橋の国華社楼上で開催された「中国画」の展覧会に出品された「原寸大の引延写真」の一部を帝大附属図書館に自ら寄贈したばかりか、国華社の経営母体であった東京朝日新聞社の経営者村山龍平(1850-1933)に働きかけ、「複製画」コレクションの充実を図った。総合研究博物館資料部美術史部門には、当時としては最良のコロタイプ印刷による、村山龍平寄贈品15点、瀧精一寄贈品4点が残されている。掛図の装いからも、「複製画」が当時いかに貴重なものとされていたかが窺われる。
主 催:東京大学総合研究博物館