2018.04.24-2018.06.23
STUDIOLO
本展示は河辺華挙が明治時代に描いた日本画を題材に、日本画家が鳥を見つめた視線を再現するものです。
日本画に描かれる鳥といえば、例えば「松に鶴」「月に雁」のような、半ば模式化された図像の印象が強いかもしれません。しかし、画家たちは空想上のテンプレートを描くことに執心していたのではありません。この巻物は粉本、すなわち、リアルな鳥を描くための精密資料であり、いわばそれ自体が研究標本と言えます。実物を前に丹念に観察し写生し、それが叶わなければ手本を写すことで、より写実的であろうとした絵師の姿がここにあります。生体の姿を再現するためのポーズ集までも描かれた粉本はまさに、現代のアニメーションにおける設定資料集と同じ役割、同じ内容を持っているのです。
今回の展示では、カモ類とカイツブリを題材に、執拗にその特徴を、模様を、羽毛の枚数を、足の構造を、描き記そうとした芸術家の執念に迫ります。その、細部を決しておろそかにしない目は、科学者の観察眼に通じるものがあります。画家が抱いた細部への執念と情熱に敬意を表しつつ、本展示ではこの「記載」を読み解いてみることにします。
主催 東京大学総合研究博物館