2015.10.02-
FIRST SIGHT
東京大学総合研究博物館は、2015年、仏リヨン市より、アジア美術の蒐集家として知られるエミール・ギメ(1836−1918)ゆかりの古展示ケース6台の寄贈を受けた。これを機に、インターメディアテクに常設展示『ギメ・ルーム – 驚異の小部屋』を開設した。ギメは青色顔料の工業生産で財をなした実業家であると同時に、オリエントから東アジアに至る、非ヨーロッパ圏の美術文化財の蒐集家としても知られる。その遺産は今日、パリの国立ギメ美術館とリヨンのミュゼ・デ・コンフリュアンスの二ヶ所に収蔵されている。「ギメ・ルーム」に設置された大型ガラス・ケースは、100年以上前にリヨンのギメ博物館のために特注されたものである。ガラス越しにモノを鑑賞する時代は、万国博覧会の開催を機に始まったと言われる。ギメの誂えたケースは、まさに「透過ガラスの時代」の黎明期のものである。ばかりか、東アジアの文物を展示するため擬アジア様式で作られている。フランスにおける「ジャポニズム」の遺産として、特段の価値を有する所以である。われわれは東アジアの古文物を展示するために仕立てられた展示ケースに、自然史から文化史まで、選りすぐりの学術標本コレクションを収め、随時展示更新を行いながら、一般公開することにした。展覧会開催を目的とする美術品や文化財の貸借は枚挙にいとまない。しかし、それらを収める「器」が地理的・時間的な隔てを超え、文化交流の媒体となる例は稀である。極東アジアの美術を収めるためフランスで製作されたギメ博物館の什器。それが日本へ運ばれ、21世紀の展示ケースとして第二の「生」を得る。3世紀を跨ぐ日仏学術交流が晴れてここに実現したのである。
主 催:東京大学総合研究博物館
協 力:リヨン市/ミュゼ・デ・コンフリュアンス
協賛・後援:新日鉄興和不動産株式会社/駐日フランス大使館