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HAGAKI
研究者コラム

ジュエリーとレディメイド
Jewelry and Readymade

 特別展示『極楽鳥』に登場するジュエリーは、19世紀半ばから20世紀半ばに亘る約100年の間に作られた。ジュエリーは年代順に並んでいない。しかし美術史の大きい流れを意識しながら個々の作品の製作年を確認すると、工芸としてのジュエリーが同年代の芸術と連動していることが明確に伝わる。写実主義、象徴主義、アール・ヌーヴォーそして前衛。時代の美意識がそれぞれの宝飾品にも反映されている。なかでも興味深いのが、写真の右下に写っている1920年台のブローチである。ダイヤモンドを主とした貴石の繊細な加工を強調するように、鳥の羽そのものが使用され、生物の滑らかな動きを再現している。その美的理念はともかく、これは同年代の前衛芸術の創作を根本的に変革した手法、レディメイドそのものだ。ちなみにケースの左端に展示されている19世紀後半のブローチは、鳥の尾っぽが揺れるように、ワイヤを巻いたバネで胴体に繋ぐ仕掛けを導入している。時代によって、鳥の動きを表現するための技法が劇的に変化している。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)
Kei Osawa

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