特別展示『極楽鳥』では、鳥をテーマにしたジュエリーとそのインスピレーションのもととなった鳥の剥製を合わせて展示することによって、宝飾作家が様々な技法をもって鳥を表現するプロセスを多角的に紹介している。とはいえ大抵の場合、ジュエリーのモティーフとなっている「鳥」の種を同定するのは困難である。その背景には、特定の鳥ではなく、鳥のエッセンスを捉えようと、表現のデフォルメと抽象化を重ねる芸術家の創作行為がある。そのなかで作家たちの想像力を刺激したのが、大航海時代以来、西洋の芸術家を魅了した「異国趣味」である。この世とあの世を行き来する象徴的な存在として多くの神話に登場する鳥だが、近代ヨーロッパの芸術では未知の世界の使者として扱われることも少なくない。想像上のエキゾチックな鳥が、自然豊かな地域の象徴として、華やかにして奇抜な色彩のジュエリーのインスピレーションとなる。その代表例が、展示のタイトルにもなった極楽鳥である。
大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)
Kei Osawa