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HAGAKI
研究者コラム

夜の森
The Forest at Night

 特別展示『極楽鳥』の薄暗い会場に入ると、ペンダントライトから月光のようにさす照明のなかで、フクロウのペンダントが浮かぶ。その背景にあるアンティーク調の木製棚に並ぶ標本は、その造形的多様性から「驚異の部屋」を連想させる。棚に照明が当たるところには、小型の鳥の剥製標本が並ぶ。それらを見守るように、右側にはフクロウの大きい剥製。奥には、江戸時代屈指の図譜『梅園禽譜』からコノハズク属の絵がかかってある。会場に入った来場者は説明を受けることもなく、突如に夜の森に佇む鳥たちに迎えられる。ジュエリー、剥製、図譜という異なるメディウムによる「鳥」が並び、言葉を介さずに対話を呼びかける。明るい空間に通り抜けると、朝の鳥に出迎えられ、展示の企画趣旨や展示物の解説が目に入る。前室とも呼べるこの夜の森の空間は、非言語的な展示デザイン方法をもって展示コンセプトを瞬時に伝える試みでもある。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)
Kei Osawa

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