インターメディアテク十周年に合わせて特別展示『極楽鳥』がオープンした。鳥をモチーフとしたジュエリーの歴史的名作と鳥類剥製標本および図譜との競演は、当館にとって様々な意味で新しい試みである。まず、開館以来はじめて三階の全スペースに亘って特別展示を展開した。また「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」との共催により宝飾品と博物学との対話が実現した。普段、収蔵展示室「STUDIOLO」に列品されている山階鳥類研究所所蔵の剥製群を間近で眺める珍しい機会も得た。製作意図、材質、スケールの異なる「作品」と「標本」の共存は、調和の取れた展示方法を必要とする。自由に配置されている小さな展示ユニットから成る常設展示とは対照的にここでは順路を設け、夜から日中そしてさらに想像の世界へと進むシナリオによって展示を構成した。もちろん、鳥の声も欠かせない。再生に使用したのは当館所蔵の蓄音機。この詩的な演出が生み出すのは、鳥をめぐってアートとサイエンスを結ぶ多角的な展示である。標本について言えば、中でもハチドリ類ジオラマは必見であろう。合わせてオーデュボンによる『アメリカ産鳥類図鑑』の図版を常設の時よりも追加し、見やすい位置に展示できたことも特筆したい。Birds in Paradiseの名の通り、普段は収蔵庫にいる鳥たちを「解き放つ」、それも本展示の見所の一つとした。
大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)・松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Kei Osawa, Hajime Matsubara