JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

謹賀新年2023
Happy New Year 2023

 謹賀新年。
 お正月の過ごし方は年々、変化し続けているようだが、多くの方にとって、年の変わり目に普段と違うことをする習慣は何らかのかたちで続いているのではなかろうか。賀状の交換や特別な食事、めったに会わない親族や知人たちとの会合等々。
 それらは古来、人々が続けてきた暦を管理するための智恵の一つなのだと思う。狩猟採集時代であれば、季節をうつろう獲物や食用植物を得るタイミングを知るために暦が必要であったし、農耕が始まってからは種まきや田植え、収穫時期の適切な判断を下すためのカレンダーが求められた。文字が無い頃、みなが暦を共有するには、何らかのタイミングで記憶に残るような祭事、つまりイベントを催すことがもっとも効果的であったに違いない。その名残が今も続いているのだろう。
 インターメディアテクは、本年、開館10周年を迎える。2013年3月の開館以来、日本郵便株式会社と東京大学の協働のもと、多くのみなさまのお力添えを得て、これまで事業を続けてこられた。心より御礼申し上げる次第である。また、引きつづきのご支援を賜りますことを改めてお願い申し上げる。
 この節目を記憶し、私どもの現在地と将来を確認すべく、本年にはメモリアルなイベントを予定している。まずは、今月20日にオープンする特別展『極楽鳥』の開催である。この展覧会は、10年間、変わらなかった常設展示フロアの一部配置を変更したものとなる。乞うご期待とさせていただきたい。
 一方で、この節目は次の10年を見すえる機会ともなる。インターメディアテクでは、重厚なヒストリーをもつ学術標本を丸の内という現代ビジネス空間において審美的な方法をもって開陳する、という独創的な試みを続けてきた。それに支持をいただいてきた大きな理由はさまざまあって、一つは場違いな空間に迷い込んだと来館者に感じさせる意外性かも知れないが、他方では、来館者がいだく学問への敬意とその未来への期待なのだと受けとめている。
 次の10年の半ばに、東京大学は創立150周年(2027年)を迎える。これまた暦に刻むべき記念行事の機会となろう。インターメディアテクにおいても、本学の伝統と創造を学術標本をもってお示しする行事を催すことになるはずである。学術の歴史の重みは自ずと増し続けるに違いない。一方で、未来への期待の行方はそれを担う者の自覚と行動にかかっている。新年の節目にあたり、本年、さらにはその先に向けて一同、思いを新たにしているところである。
写真:インターメディアテクで展示中のノウサギ剥製

西秋良宏(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館館長/教授)
Yoshihiro Nishiaki

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