JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

アカデミアでの国際会議
International Conference at Academia

 インターメディアテクにおける集会場と言えば、アカデミアである。昭和初期に東京大学の階段教室で使われていた什器の一部を移設してしつらえた定員50名ほどのこじんまりとした講義室である。歴史を感じさせる木製の長机や赤い布団がそなわった木製椅子、さらには壁に掲げられた歴代教授の肖像画など、来館者にかつての大学がもちあわせていた気品を感じてもらう格好の場となっている。コロナ禍で集会が制限される前には、頻繁に、海外の研究者のセミナーや国際会議に利用していた。各席の机に設けられている丸い凹みはインク壺をおくためのものなのだが、ペットボトルの置き場だと勘違いする今時の出席者を注意するのが定番だった。コロナ禍前に開催した最後の国際集会の一つが、2019年12月の第9回西アジア新石器時代石器研究集会である。1993年のドイツ大会を皮切りにして約3年おきに開催してきた集会で、アジアでは初めての開催であった。主会場を本郷キャンパスとして一週間、実施した会議のうちの半日をアカデミアで過ごしたものだが、17ヶ国、100名を超える出席者は一様にインターメディアテクの審美的空間と世界観に感銘を受けていた。その会議の収録集が先月、オランダの出版社から刊行された(総合研究博物館の関連ツイート)。600ページを超える大部な英文図書である。巻頭の序文には添付のようなアカデミアでの記念写真を掲げた。全ての出席者を受け入れるには少々せまかったのだが、膝をかかえて床に座るのもよし。今風に言えば、どうみても「密」。それが許された社会がつい最近まであったことと、短いのだか長いのだか、そのことを懐かしく思うだけの時間が急激に過ぎたことに思いをよせている次第である。

西秋良宏(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館館長/教授)
Yoshihiro Nishiaki

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