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HAGAKI
研究者コラム

グリプトドン骨格図

 この骨格図は、19世紀後半に教材として使われた教育用掛け図コレクションの一部である。描かれているグリプトドンは絶滅生物で、こうして見ると小さく見えるが、実際には全長3mにも及んだ。図の下部に記されているPanochthus(パノクトゥス)は属名である。上は横を向いた骨格図で、下は装甲に覆われた背中から尾の部分が目立つように描かれている。この図を見た時に、おそらく出典があるのではないかと考えた。調べてみると、古生物学者のカール・アルフレート・フォン・ツィッテル(1839-1904)が編集したText-Book of Paleontologyの第3巻「哺乳類」に掲載されている図123、図124とそっくりである。図123は、アルゼンチンのパンパス(大草原)で見つかったグリプトドンの復元骨格(装甲なし)を、図124は、ブエノスアイレス州のパンパスで見つかったグリプトドンの復元された装甲を描いている。図と共に記載されている文章はグリプトドンの外見描写で、歯から始まり尾で終わる。これらの図がグリプトドンの身体的特徴を説明することを想定したアングルで描かれていることを思うと、実際に教育の場でどのように使われたのか、想像がしやすい。

秋篠宮眞子(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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