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HAGAKI
研究者コラム

からだのかたち

 肉眼で、ある1つのモノを観察した時、モノに重なりあうものや、モノと背景との間に境界が生まれる。つまり、そのモノ自体の輪郭に実線は存在しないはずである。しかし、我々ヒトがあるモノを描こうとする時、肉眼では存在しないモノの輪郭を描くという行為が洞窟壁画の時代から見られる。これは、手の指でなぞり描くことからはじまるように、身体(からだ)の形状(かたち)につながる。3月6日からスタートした、特別展示『からだのかたち――東大医学解剖学掛図』では、東京大学大学院医学系研究科・医学部二号館の一室に保管されてきた解剖学の講義で使われた掛図を公開している。掛図は、手描きで描かれており解剖学に関わるものだけでも総数にして700点を超える。その中から厳選した掛図を入替えをしながら約20点ずつ紹介する。風で揺れ動く木々やとどめなく折り返す波を眺めその空間に包まれるように、森で虫や動物と出逢い言葉ではない交信をするかのように、「からだのかたち」の絵図を眺めながら別世界へ旅に出る、そういうひと時を過ごしてもらいたい。

上野恵理子(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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