JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

近刊予告篇(三)

 出版は本年十一月中旬になりそうであるが、待望の写真集が出せることになった。国立台湾大学の構内風景をテーマとするもので、題して『學舎景——國立臺灣大學逍遙』という。台湾語、英語、日本語の三ヶ国語の併記本である。いまから十年近くも前になるが、台湾大学でいくどか展覧会を開く機会があり、以来、彼地の人々の気性、街並、自然、食事にすっかり魅了されてしまった。とくに台湾大学構内に残されている、帝大時代のレトロな建物の佇まいには心惹かれるものがあったことから、写真家の萩倉英樹さんに同伴を願い、大学構内各所で写真を撮ることにした。萩倉さんは魚眼レンズを駆使した三百六十度パノラマ写真のパイオニアで、構内景観や建物内観を精緻なデジタル写真に納めてくれた。昨年、機会があり台湾大学図書館長陳光華さんに写真集の話をもちかけたところ、出版について快諾する旨の返事を頂き、晴れて出版の見通しが立った。アジアの「クラシック建築」や「アール・デコ建築」を魚眼レンズでパノラマ視化する。すると、戦前の帝大建築が文字通りの「バロック建築」に化ける。その変容振りは想像を超えるものであった。表紙を決めていないが、迫力のあるものにしたい。

西野嘉章(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館特任教授)

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