欧州最古の大学といわれるボローニャ大學。様々な建物に分散されていた法学部(民事法、教会法学)と学芸学部(哲学、医学、数学、物理学、自然科学)とを一つの建物に統合しようと1563年最初の大學棟として建てられたのがArchiginnasio館。今も残されている解剖学教室とボローニャ大學旧教室[現市立図書館]が一般公開されている。資料調査に初めて訪れた図書館内部で強烈な体験をした。門をくぐりポーチを眺め、真ん中がすり減った階段を上がり、ノートなど必要品以外のカバン類はすべてロッカーに入れ、さらにIDを預けてから入室をする。そこをくぐり抜け、この空間に入った。外部からのアプローチ、内部の装飾が施された空間、目の前の木製の閲覧テーブルには数百年前の埃を被った資料、日本から調査をしに来た自分の身体が1本の軸でつながった。その実感がゆっくりゆっくりと身体に充満し、言葉にし難い不思議な時間を過ごした。歴史的建築空間に居座ることで場が身体通して我々自身の存在を定義してくれていること、残し遺されたモノたちがバトンになり、ただ静かにつないでくれたのである。
上野恵理子(東京大学総合研究博物館特任研究員)