JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

インターメディアデザイン その五
特別展示「アートか、サイエンスか」より

 展示されている機器には、当時の最先端の技術を備えたドイツ、フランス、アメリカ製などの舶来品がある。文部省が交付したいわゆるオリジナルである。これらの高価であった機器の財政負担の軽減と普及のために、国内の数社によって模造が始まった。全てがコピーできたわけではないにせよ日本の物理学と技術発展に大きく貢献したのだ。そこには職人たちの試行錯誤と創意工夫、平たく言えば職人魂があったに違いない。なぜなら、教育用実験機器である限り、その成果が得られなければガラクタでしかない。言ってみれば、解のある方程式の公式を「製作」するようなものである。一方、その技量が別のベクトルを示したものが工芸や美術であり、ガラクタさえも意味を与えればアートになるのだ。そして、その中間には何があるだろうか。中間といっても分類上ではなく融合として。少なからず展示デザインはその部分に接触する。三角形の展示ケースに入れられた三角プリズム、旧式のエレベータ内に置かれた電話機、職人魂を魅せるには時に遊び心も必要である。人間はモノや構図を5分以上見なければ詳細に記憶できないらしい。深い洞察をもって見なければ、如何なる価値をも見い出すことはない。自己への教訓である。

関岡裕之(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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