丸の内のハシブトガラスペアは今年も元気だ。この春はまたしても、並木に巣をかけている。だが、今年は5月になって葉が十分に展開するまで待ったので、まだバレていないようである。撤去もされていない。だが、IMTのオフィスの、私のデスクの後ろの窓からは巣が見えている。もちろん裸眼では厳しいが、そのつもりで見れば「あれが巣」とわかるものは見える。双眼鏡なら完璧だ。時々観察していると、親鳥が給餌に来るのが見える。先日からは巣の中に頭を差し入れているので、中に雛がいるのだろう。せっかくなので三脚を立てて望遠鏡を乗せ、同僚にも見てもらった。ところが、「どれが巣かわからない」「葉っぱが茂りすぎて見えない」と大いに不評であった。鳥類学者としては、あれほど明確に見えていれば御の字なのだが…… それどころか、見上げるのではなく、水平方向に見えるだけでも大助かりなのである。
松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)