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HAGAKI
研究者コラム

君の名は

 館内に「カエル骨格標本コレクション」と銘打ったコーナーがある。キャプションには「明治10年代?/佐々木忠次郎か?」とある。博物館のキャプションがかくも曖昧なのはお叱りを受けそうだが、実際、こうとしか書きようがない。わかっていることは僅かだ。まず、この一連の標本は理学部から出たものである。一体だけ、ヨーロッパアカガエルの標本があるが、他のカエルたちは、鼻面の形状や頑丈な前足などから、全てヒキガエルとわかる。現在なら解剖実習にはウシガエルを用いるが、これは1920年代に日本に持ち込まれた移入種だ。それまで日本で入手しやすい大型のカエルはヒキガエルだった。つまり、この標本はウシガエルがいない時代のものだろう。その他、台座の特徴などを比較して、明治時代、それもかなり古いものと判断した。その時代にカエルを解剖し続けたというと、モースやホイットマンの下で動物学を学んだ佐々木忠次郎か? とまあ、こういう推論をしてのことである。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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