大学生ボランティアが担う「アカデミック・アドベンチャー」という小中学生向けの展示案内プログラムでは、普段の準備や練習の時から、解説や説明という言葉を敢えて使わないようにしている。というのも、展示物に関する知識を伝達することが主目的ではなく、双方向的なコミュニケーションを通じて、子どもたちが展示物を自分の目で見て、それについて自分の頭で考える体験をするための手助けを行うことを重視しているからである。それを実現するためにどのようなアドベンチャーを作るのか、取り上げる展示物を決めるのも、リサーチを行いながら内容を組み立てるのも、大学生自身である。毎週、ボランティア活動日に集まる学生たちの試行錯誤に立ち会う立場にある私の目から見て、詰まるところ一番大切なのは、学生自身が「面白い」と思った最初の気持ちを子どもたちが追体験できるアドベンチャーになっているかどうかという点であるように思う。ひらめきや情熱といった感覚的なものを含めて、自分が面白いと思うことを「人に伝える」のがいかに難しいことか。学生たちの日々の努力に接し、私自身はそれができているかと研究に取り組む自分の姿勢を時折振り返る。
寺田鮎美(東京大学総合研究博物館特任准教授)