もう、いまではそう珍しいことでもないが、ホンダのアシモくんが初めて二足歩行ロボットとして登場した時は驚いた。アシモくんの開発チームのメンバーは、開発にあたって、このような人間の似姿を製作しても宜しいだろうかと、ローマ法皇にお伺いを立てたそうだ。「はじめ四本足、次に二本足になって最後に三本足になる動物はなにか」というスフィンクスの謎かけがまさにそうであるように、「歩く」ということは人生を表している。そして、「歩く」ことと対になるのが「知恵」である。ホモサピエンスは、アフリカで二足歩行をはじめたことによって「知恵」を得た。「歩く」ことが人生を表している一方で、歴史的に見て「知恵」が超越者を表すことはそう珍しくない。代表的なものに、古代エジプトの思想や、ユダヤのメシア思想などがある。「知恵」の似姿としての人工知能はいま、ゲームの世界では超越者となりつつある。医療の世界では難しいガンの早期発見をやってのけたりする。ゲームや画像認識の世界にとどまらず、これから、社会全般にありがたい超越者として、人工知能が広がってくるのであろうか。だが、世の中を眺めているとイカサマ人工知能も多い。つまりは霊感商法的な....。
森洋久(東京大学総合研究博物館准教授)