アカデミア内の壁面に設置している肖像画(油画)の内、2点が現在修復中である。アカデミア以外でも、インターメディアテク内には複数の肖像画が展示中であり、その中には修復を終えたばかりの作品も存在する。絵画修復の専門家により、クリーニング作業が進められ、状態の悪い作品については複数回、クリーニング作業を繰り返しつつ、カンバスの補強等も行われている。作業が進むにつれて、描かれた当初と近い色彩になり、随分と違った印象に変化してくる。しかしながら、修復前のイメージを覚えている人は少なく、大きな色味の変化に気づかれることは殆どない。これは修復が違和感のないよう順調に出来ているとのことでもあるだろう。絵画作品に限らず、展示中の標本については常に劣化を続けており、時間の流れに逆らい、それらを完全に止めることは出来ない。しかし、日々のメンテナンスや定期的な修復により、劣化のスピードを可能な限り遅くすることは可能であり、今後も継続的に進めていきたいと思う。
菊池敏正(東京大学総合研究博物館特任助教)