11月15日より、インターメディアテク内階段教室「ACADEMIA」にて、蓄音機音楽会を定期的に開催いたします。
「言葉をしまって置く機械」、「写話器機」、「蘇定機」、「蘇音器」― 音を録音し、それを無限に再生する仕組みが発明されてから、それが普及し、「蓄音機」という名称が定着するまで数十年かかりました。発明当時の人々は、音を発するこの謎の家具に関心を持ち、時には恐怖に襲われるほど当惑したといわれています。しかし、LPレコード、CD、そしてデジタルファイルの普及とともに、蓄音機は廃れ、ミュージアム等に残っているものはただの展示品となっています。本音楽会は、蓄音機を再生装置として再び活用し、機械がもつ本来の可能性を新たに味わうことを目的とします。
東京大学総合研究博物館は二台の蓄音機を所蔵しています。ひとつは、1925-1928年に作られた銘機、ヴィクトローラ社のカナダ製クレデンザ「VV8-30」です。もう一つは、クレデンザをもとに、昭和初期の楽器設計者、平林勇(1904-1938年)が1931-1932年頃に製作した、独自の音声増幅システムを含む蓄音機です。
音楽会では、これら二台の蓄音機を用いて、レコードをはじめとする様々な音楽記録媒体を再生します。その中で最も貴重な音源が、昨年の冬に総合研究博物館に寄贈された「湯瀬哲コレクション」です。ジャズを中心とした1万枚を超えるこの個人レコードコレクションには、多くのSP盤が含まれています。湯瀬氏が生涯に亘って形成したコレクションを蓄音機最高級のヴィクトローラ製クレデンザで再生することによって、希少な名盤を紹介すると同時に、デジタル時代とともに失われた「音」の厚みと奥行きを改めて共有したいと思います。アイポッドの時代に、インターメディアテクの階段教室に集まり、昔ながらの音楽会を体験することによって、ミュージアムを「共感覚」の場に転換する企画となるでしょう。
とは言え、この試みは懐古趣味に満ちた集会ではありません。忘れられた名盤を鑑賞するとともに、生の音声から電子音楽まで幅広い音源を蓄音機に通し、蓄音機がもつ再生装置としての可能性を追求していきます。
第一回蓄音機音楽会
日時 2013年11月15日(金)18:00(終了予定時間18:45)
場所 インターメディアテク2階ACADEMIA(レクチャーシアター)
参加費 無料 ※事前予約不要
席数 48席(先着順)※ 席に限りがありますので予めご了承ください。
※プログラムの詳細及び今後のスケジュールについて、インターメディアテク・ホームページをご覧ください。
主催:東京大学総合研究博物館
協力:梅田英喜+杉崎信
企画構成:東京大学総合研究博物館インターメディアテク寄附研究部門
お問い合わせ先:
03-5777-8600(ハローダイヤル)