特別展示『台湾蘭花百姿 – 東京展』のパート4「台湾蘭と自然・芸術・人間」では、山田壽雄の描いたラン科植物画を初公開している。本資料は、2023年12月に東京大学総合研究博物館が寄贈を受けた新規収蔵資料で、58点のなかから、本展示では、台湾蘭を描いた5点を紹介する。前期展示(4月13日まで)では、ツバメセッコク・ベニバナセッコク・タイワンセッコクの三種を描いた1点に、コチョウランおよびホウサイの図を合わせて、計3点を公開している。山田壽雄は、福島県に生まれ、植物学者の牧野富太郎に描画指導を受け、植物を専門に描くようになった画家である。牧野は、自身で植物の精密な図を描き、その詳細な解説文を綴ることのできる稀有な植物学者であった。その牧野の要求に応えて植物を描くことのできる者と言えば、山田の植物画家としての優れた力量が窺い知れるであろう。本展示で紹介する台湾蘭の図は、李王家東京邸で栽培されたものを山田が描き留めたものであり、台湾蘭が戦前の日本で栽培されて花をつけた記録として、園芸史や蘭愛好の文化史の観点からも興味深い資料である。後期展示(4月15日から6月8日)では、カンランとカクチョウランをご覧に入れる。
寺田鮎美(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Ayumi Terada