JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

特別展示『コスモグラフィア(宇宙誌)』

2013.03.21-2014.03.09
FIRST SIGHT

 現代はまさに太陽系の大航海時代にある。人類は無人探査機を操り、太陽系を構成する様々な天体の調査に取り組んでいる。われわれの手にした画像データは、すでに膨大な量に上る。最先端のテクノロジーを駆使し、それらのデータを解読し、あらたな知見を得ようとする努力、それが惑星の科学(サイエンス)である。
 現代の科学研究から明らかになりつつある、惑星の素顔は驚異に満ちている。ばかりか、世界各地で見出される地表面のそれとよく似たものも多い。「地球」と較べるのにもっとも適格な天体とされる「火星」の表面がそうである。既視感(デジャヴュ)という言葉を使いたくなるほど、「地球」と似た光景がそこに見出されるのである。惑星探査は、他ならぬ「地球」に関する知識を深めるのに役立っている。
 人類とはなにか、地球とはなにか、そして生命とは・・・・・・・惑星の科学(サイエンス)もまた、普通の人間が、普通に思い巡らす根本的な問いを避けて通れない。そのため、物理学や生物学、さらには文学、哲学、社会学にまで、協働の射程を拡げつつある。その極北が芸術(アート)である。最先端の惑星科学がもたらした天体画像と抽象絵画、両者の「近親と相関」をあらためて問いただしたくなる所以である。
 モノのありよう、世界のありよう、あるいはこう言って良ければ宇宙のありようを眺める方法は、科学的なそれに限らない。歴史や文学や芸術など、さまざまな眼で天体の素顔を直視したらどうか。宇宙のはるか彼方から送り届けられた画像のなかに、20世紀の抽象絵画と通底するイメージが溢れているのである。この後者が、人類のみに許された創造的な営みの所産であると考えたとき、両者の符合はまことに不可思議なものとしか言いようがない。
 宇宙創生ダイナミズムの痕跡をとどめた惑星の写真を眺めながら、20世紀絵画のヴィジョンに思いを馳せる。そうした自由さを味わってみたらどうか。

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