JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

特別展示『アヴェス・ヤポニカエ〈10〉 – 彷徨える分類』

2024.07.30-2024.09.29
STUDIOLO

 「種は生物の基本であり、絶対的なものである」-そう思われるかもしれない。だが、進化を考えれば、種とは常に変わりつつある集団の、現時点での状態に過ぎない。そして、人間が「ここまでが同じ集団」と決めた恣意的な定義でもある。その種に与えられる固有の学名も、分類の変化によって移り変わる。
 人間は世界を分類したがる。小型の鳥類を「ことり」で終わらせず、「スズメ」「ツバメ」などと呼び分けているのは、分類の始まりである。一方、このような自然分類は現代の生物学的な基準とは整合しない場合がでてきた。例えば、「見た目に区別できないが、遺伝的に交流がない2集団に分かれている」といった場合だ。こういった集団は既に異なる遺伝子プールとなっており、今後、遺伝子が共有される見込みもない。つまり生物学的には「既に別の生き物」である。鳥類でも遺伝子を用いた研究が進み、従来の系統や分類が大きく変化しつつある。
 日本の鳥類の分類と命名については、日本鳥学会の発行する日本鳥類目録が一つの基準となる。本年度、日本鳥類目録改訂第8版が刊行され、最新の研究結果が反映された。その結果、分類上の位置付けが変わったものがかなりある。例えばイソヒヨドリは従来ツグミ科とされていたが、その後の研究でツグミ科がヒタキ科に統合され、さらに最新版ではツグミ科が復活するも、イソヒヨドリはヒタキ科という解釈になった。日本のヨタカは東南アジア産のCaprimulgus indicusの一部とされていたが、極東の個体群は別種 C. jotakaとなった。
 今回は日本鳥類目録最新版から、分類の変遷と流転について一瞥していただきたい。

主 催:東京大学総合研究博物館

一覧に戻る