JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

特別展示『魚学コトハジメ』

2023.09.26-2024.02.18
GREY CUBE

 明治から昭和初期の東京大学で用いられていた魚学の描画教材を公開する。これまで、植物や鳥類、あるいは人体などの類似資料を展示してきたから、かつて描画資料が大学で作成されていたことを知る来館者も多かろう。お雇い外国人によって導入された教育研究活動であるが、やがて、日本人教授が自らの立ち位置をもって展開するようになって一気に普及した。
 日本人による『魚学コトハジメ』に多大な役割を果たした一人が岸上鎌吉(1867−1929)である。岸上は、日本周辺海域のサバ科魚類やクルマエビ属の甲殻類などの水産上重要な海産生物の実態を明らかにすべく、分類をはじめとした基礎研究を推進した。その過程で残された描画資料には形態学、生態学および生理学など様々な側面から魚類を観察した資料が含まれるが、本展では特にサバ科の全身図を中心に公開する。
 見どころの第一は、現在のように写真や動画が自由に使えなかった頃、画工あるいは研究者自身が何を図として記録すべきと考えたかの解読である。岸上が新種記載したサバ科魚類の有効性が、タイプ標本が失われてもなお認められているのは、彼が残した記載および図が標本の代わりになるほどの正確性を保っているからに他ならない。本展示に際する予備調査で初めて発見された「ユーティヌス・リネアトゥス」の全身図も今後もそのような活用が期待されるものである。記載における分析は分類学の要諦を再認識させうる。
 さらに、学術描画のアート性も見どころとなる。常設展示では、同時期に残された他の生き物の図が諸処に陳列されている。今回、初公開する魚類画は、一世紀前の学術描画のあり方を広く比較点検する機会となろう。

主催:東京大学総合研究博物館

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【特別講演会】
特別講演会『岸上鎌吉と魚学』

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