2022.04.26-2022.07.18
GREY CUBE
山中俊治(東京大学生産技術研究所教授)はインダストリアル・デザイナーかつ人工物エンジニアリングの専門家として時代の先端を走る。本展は、山中のデザインが、どのように生み出されたのかを博物学的観点から解析すること、そして、それをとおして人工物と自然界にみられる形態の相同を考察する試みである。
機能的でありながら見た目や社会の肌感覚にも心地よい人工物の考案を目指すエンジニアリングと、自然界の学術的理解を主たる目的とする博物学。芸術と科学の対比に似て隔絶しているように見える両者に接点は存在しないのか。この問いかけが生じたのは、工学的・審美的な計算をもとに設計された人工物の形態に似た展示物が我々の博物館の中のいたるところに見いだされる事実にもとづく。
実のところ、最先端のエンジニアリングは、デザインの創発段階にあって、博物学における分類、記載、解析、解釈と同じような方法で図像や事象や調査をおこなっている。博物学とは独立した営みであるにもかかわらず、成果物だけでなく、それを生み出すプロセスにおいてもみられる類似は無関係のようには思えない。その内実を考察する本企画は、山中自身の言によれば「博物館の収蔵品と私の作品との意味的、原理的、あるいは形態的なつながりを改めて考える展示である」。
展示タイトルに言う「プロトログ(protolog)」とは生物の新定義する際におこなう最初の記載(原記載)を指す語である。本展においては山中自身の作品についての語りが、まずはそれにあたる。同時に、本展では、一流のデザイナーの着想の始源(プロト)、そこから作品の生成に至るまでの思考の日誌(ログ)を提示することをとおして、人工物デザインの発生プロセスを記載する語としても用いることにした。
主催 東京大学総合研究博物館+東京大学生産技術研究所山中俊治研究室