2019.02.16-2019.05.12
GREY CUBE
インターメディアテク博物誌シリーズ第三弾として、「四高」こと旧制第四高等学校(金沢大学の主たる前身校)に由来する器具類を紹介する特別展示を開催いたします。
主催 東京大学総合研究博物館
共催 金沢大学資料館+石川県立自然史資料館
協力 合同会社AMANE+学術資源リポジトリ協議会+東京大学駒場博物館
協賛 株式会社島津製作所+伯東株式会社
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研究者の科学的な思考の所産である器具類を、あるいは審美的な視点から、あるいは造形的な視点から、あるいは歴史的な視点から、再評価する動きが目立ち始めたのは最近のことである。欧米先進国では、早い段階でサイエンス・ミュージアムが整備され、科学技術史遺産の保存が進められてきた。しかし、1981年にルーマニアのブカレストで開催された第16回国際科学史学会で、近代遺産の保全の必要性が再確認されねばならなかったという事実は、いまだ科学史遺産の価値が十全に認められていないことの証でもある。日本の現状もいまだその段階にある。金沢大学資料館、石川県立自然史資料館の両館に分蔵されている、「四高」こと旧制第四高等学校(金沢大学の主たる前身校)に由来する器具類は、国内最大級のコレクションでありながら、これまでそれらの存在価値が認知される機会に恵まれなかった。その遺産のなかから、造作物として興味深い器具50点を精選し、一般公開を通じてそれらのデザイン性を改めて検証してみたい。展示の眼目は、科学器具の奇態な「造形美」へ衆目の注意を喚起することにある。科学的・教育的な意図をもって組み立てられた器具類は、もとより合目的的な性格を有していた。とはいえ、それらがどのような狙いを秘めたものなのか、いまや理解し難いものも少なくない。しかし、ときには理論や学説に拘泥せず、即物的に眺め返す機会があって良いように思う。そうすると、科学器具もまた、アート作品同様、観る者の想像力に働きかけるモノへ変容するに違いない。精緻に工作されたモノとして、自律的な「生」を生き始める、ということである。本展が、「アートか、サイエンスか」の二者択一の呪縛を解き、「アートでありサイエンスである」という、より自由なモノの見方への誘いとなれば幸いである。
西野嘉章
インターメディアテク館長