JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

科学映画上映『クラウド・キネマ――阿部正直の山雲観測映像』

2017.02.25
ACADEMIA

日時 2017年2月25日(土)16:00(開場15:30、終了予定時間17:15)
場所 インターメディアテク2階ACADEMIA(レクチャーシアター)
参加費 無料(事前予約不要)
席数 48席(先着順、席に限りがありますので予めご了承ください)
*撮影および録音は禁止とさせていただきます。
*会場でのご飲食(ガムを含む)はご遠慮ください。

 インターメディアテクで開催中の特別展示『雲の伯爵――富士山と向き合う阿部正直』の関連イベントとして、阿部正直が制作した映画の上映を行います。
 阿部正直(1891-1966年)博士は1927年、私費で御殿場に阿部雲気流研究所を設立しました。1942年頃まで研究書及び専門誌への寄稿を通して、富士山の山雲発生過程の究明に努め、写真・フィルム・気象観測記録シート・データ帳を含む、近代気象学を代表する膨大なアーカイブを残しました。なかでも映画に情熱を傾け、研究と連動した映像技術開発にも貢献した阿部博士は「マルチメディア」の知られざる先駆者でもあります。撮影に熱心に取り組み、3D映像の撮影・投影機器を含む多くの自作撮影装置を残している阿部正直は、その技術的知識を科学研究に応用し、「雲」という気象現象を様々な角度から捉え、複合的な観測方法を確立し、気象学において初めて映像中心の研究方法を採りました。
 阿部正直コレクションを調査するなかで、多くの未発表映像が発見されました。雲に特化した映像は独自の芸術的価値を有する作品として、また初期科学映画史の重要な標石として再評価すべきものです。ここでは編集された科学教育映画に焦点を当て、1946年に制作された『雲と気流』に加え、新たにデジタル化された『富士山 雲の動き』の2ヴァージョンを上映します。また、上映前には阿部正直が国内外で撮影した個人映画(プライベート・フィルム)を紹介します。

【上映作品】

「富士山 雲の動き」
1929年/18分/35mmをデジタル化/白黒/無声
制作・監督:阿部 正直/撮影:阿部雲気流研究所
富士山の麓を飾る雲から山頂を覆う雲海まで、各位相で発生する雲を体系的に分類し、阿部雲気流研究所で撮影された観測映像をもってその特徴を説明する、詩的な科学映像。中でも、阿部正直の研究対象であった「つるし雲」の分類が細かく説明されている。雲を形成する気流の生成過程を可視化するために、雲が写っている映像の速度を80から160倍まで加速した映像編集技術を用いっている。

「富士山 雲の動き」
1937年頃/18分/16mmをデジタル化/白黒
制作・現像・録音:理研科学映画株式会社/監修:阿部 正直/撮影、編集:阿部雲気流研究所
上記作品を一般参考用に改編したもの。ここでは雲形の分類に止まらず、その生成過程をナレーションで説明している。そのスクリプトは、阿部正直の論文や随筆にも見える、簡潔にして流れの良い文体で構成されている。戦時中の当時、阿部正直は東京中央気象台に委嘱として入り、そこに「阿部研究室」を設けていた。

「雲と気流」
1946年/22分/35mmをデジタル化/白黒
理研科学映画株式会社/企画:中央気象台/指導:阿部 正直/出演:富岡 捷/撮影:松尾 芳楠/編集:岩堀 喜久男
阿部正直は、御殿場で観察した雲の生成過程を究明すべく、本郷西片の邸宅に実験室を設けていた。富士山の模型を用いった風洞実験を重ね、気流の動きを再現し、そのプロセスを撮影した。阿部正直の研究成果を教育用に纏めた本編は、1951年に出版された岩波写真文庫『雲』の映画版とも言える。雲の観測映像と風洞実験映像の組み合わせによって、雲の発生・風と雲・山と雲の各テーマが明快に紹介される。教材として簡素に編集されたものの、各場面を区切る富士山頂の幻想的な映像が印象的である。


主催 東京大学総合研究博物館
協力 社団法人「蟲喰鷹ノ羽」+御殿場市教育委員会+一般社団法人記録映画保存センター
企画構成 東京大学総合研究博物館インターメディアテク研究部門

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