JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

アカデミック・アドベンチャー 2016

2016.04.01-2017.03.31
ACADEMIA

小・中学生の皆さまへ

 アカデミック・アドベンチャーでは、IMTボランティアの大学生が「インターメディエイト」(=媒介者)として、皆さんのアドベンチャーの案内役を務めます。IMTボランティアは、東京近郊のさまざまな大学に所属し、それぞれの専門分野の勉学や研究を行いながら、JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」の活動をお手伝いしています。
 私たちIMTボランティアがアドベンチャーの内容をご紹介いたします。


中村千紗都(尚美学園大学学術情報学部情報表現学科 3年)
アカデミック・アドベンチャーでは、自分が思いもしなかった人の考えを知ることができます。自分が何の疑問ももたず見ていた植物標本も、誰かが「どうしてここにこれがあるのか」と問いかけをくれるだけで、その植物標本について考えるきっかけが生まれます。私がアカデミック・アドベンチャーの対象に選んだ「毒キノコ模型標本」もそういったものの一つです。私たちの日常で身近なキノコ。この誰もが見たことのあるものが博物館にある理由や、キノコの生態についての質疑応答を中心に、普段なら気に留めず見ているモノも、見方を変えることによって新しい見方が生まれるということを伝えるために、このアドベンチャーに取り組んでいます。インターメディアテクにはたくさんの学術標本があります。膨大な資料の中から一つを例にとって疑問を提示することで、ただ流し見るだけではなく、自発的に見方を変えるようになり、より見学を楽しめるのではないでしょうか。これから博物館や美術館で展示品を観る時や日常の中でも視点の転換ができるようになれば、より新しい世界が広がっていくと私は考えています。

和田翠(東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻 修士2年)
インターメディアテクには、面白いな、綺麗だな、と思うものがたくさんあります。ただそう思って眺めてもよいのですが、それだけではもったいない、というのが私のアドベンチャーの出発点です。面白い、綺麗だと思った形や色は、そのものにとってどういう意味があるのでしょうか。貝の標本を実際によく観察してその貝が生きている様子を想像してみると、見えてくるものがあると思います。他の人の意見を聞くと、自分一人では気づかなかったことにも気づくかもしれません。以前に学校で聞いたことや本で読んだことがヒントになることもあるでしょう。実際のものと、他の人や自分の知識とを結び付けて考える楽しさを体験してもらえればと思っています。

森川雄太(東京大学教養学部 2年)
普通の博物館では展示の説明書きを読んで知識を得ることが多いかと思います。しかし、私のアドベンチャーでは、皆さんが周りにあるものに対して疑問をもち、様々な「視点」をもつ「考え方」ができるようになってもらいたいと思っています。「モノ」をよく観察して直接対峙すると、様々な疑問がわいてきます。例えば巻き貝を観察していると「なぜこんな形をしているのだろう」「どうして巻いているのだろう」などと不思議に思うことがあります。そのように疑問をもつことから知の冒険は始まります。一つのものでも疑問を投げかけた分だけ、たくさんの視点の数だけ、その「モノ」の姿が浮かび上がってきます。私から皆さんに様々なものの見方を提供することもあれば、皆さんから新鮮な見方を教えてもらうこともあります。時にはまだ解明されてない謎が立ちはだかり、皆さんと一緒に答えを考えることもあります。それもアドベンチャーの楽しみの一つです。

遠藤綾乃(東京学芸大学教育学部環境総合科学課程文化財科学専攻 3年)
私のアカデミック・アドベンチャーでは、身の回りにたくさんある「ガラス」を取り上げています。はじめて皆さんにガラスの器を見せるときは、まずどのような素材からできているか、「ガラス」という言葉を出さずに問いかけます。面白いことに、「ガラス」からできていると答える人はほとんどいません。窓ガラスやコップなど様々な形で生活に関わっているガラスと、インターメディアテクに置いてあるその器は、様子が異なっているからです。目の前の器を起点に、皆さんが感じたことを大切にし、ものの見方の多様性、博物館の楽しみ方などを伝えていきます。そして、博物館を自分の身近に感じてもらえるきっかけになればと思っています。

濱本駿(早稲田大学教育学部社会科学科社会科学専修 4年)
「観察」と「発見」。この2つが博物館を楽しむためのキーワードではないでしょうか。私は骨格標本をアカデミック・アドベンチャーの題材にしており、ウマやクジラなど、実際に触れ合うことも出来る身近な動物たちを取り上げています。どうしてインターメディアテクには、このようにごく身近な動物の骨格標本が展示されているのでしょうか。その答えの一つは、実際に骨格標本を隅から隅まで観察してみると、それが見知った動物であっても、新しい発見が色々とあるからだと私は考えます。たとえば、動物の「歯」を一つとってみても、食生活や生活環境によって構造に大きな違いが出ていることに驚かされます。インターメディアテクには、エジプトのミイラや希少な鳥の剥製など、「珍しいモノ」がたくさん展示されている一方で、「珍しくなさそうなモノ」も同じくらいたくさんあります。一見したら何の変哲も無い学術標本であっても、じっくりと自分の目で観察してみることで、色々な発見を得ることが出来るかもしれません。アカデミック・アドベンチャーを通じて、観察する楽しさと発見する喜びを感じてほしいと思います。

中田大夢(東京大学教養学部 2年)
私のアカデミック・アドベンチャーは、「価値に縛られないこと」をテーマにしています。インターメディアテクの展示の中に、黄鉄鉱という鉱物と自然金レプリカがあります。黄鉄鉱はその独特な外見から、「愚か者の金」と呼ばれるほど金と間違われることがありますが、金とは違い、金銭的・工業的価値はありません。一方で、金のように、金銭的価値や工業的な価値が高いものは、誰にとっても重要なものです。金と黄鉄鉱という対照的なものを通じて、価値について考えていきます。レプリカを見るとわかるように、掘り出されたばかりの自然金は、実はくすんだ色合いで形もいびつです。反対に、黄鉄鉱のように一般的な価値がないものでも、私がそこに美しさを見つけたように、個人にとっての価値を与えることができます。周りの人間の価値観も大事ですが、自分自身がおもしろい、すごいと思ったものを追い求めてみることも時には重要だと考えています。私のアドベンチャーでは、皆さんが追いかけてみたいものを見つけるきっかけを作りたいと考えています。

伏見有加(慶應義塾大学商学部 4年)
インターメディアテクと出会うまでの私は、「博物館では、展示品は『所属』や『年代』分類ごとに並べられているものだ」と考えていました。しかし、インターメディアテクと出会ってからは、年代どころか、普通は近くに並ばないような「モノ」たちがすぐ隣のケースに並んでいることから得られる発見や驚き、喜びを知ることができました。私がアカデミック・アドベンチャーで取り上げている、美術品の「零円札」は、1900年代のヨーロッパの紙幣、自然金、金貨コレクターのコレクションなど、普通であれば隣に並ばないであろう、概念や見た目が似ている(ように見える)ものと同じケースに並んでいます。零円札やヨーロッパの紙幣のエピソードを通して、身の回りにあるものや考え方を新しい見方で見るヒントを発見し、いままでより少し違った日々を過ごしていくきっかけをしてもらえたらと思っています。

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