第六号は「『リデザイン』による世界再構築」の副題をもつ、『ReDESIGN+』なるナンバーとなった。開館から五ヶ月してからの発行ということで、オープン時の館内展示を紹介するものであると同時に、インターメディアテクの進むべき道筋のひとつに、「リデザイン」があることを示す、マニフェストの性格を併せもつようなものにしたいと考えたのである。それは最終号と位置づけられているものとして、自然な流れに沿ったものであった。『Intermedia』全六冊の発行は、多言語併用出版、印刷技術実験、(すべてを自前で賄う)インハウス・エディトリアル、(ヤレ紙などの廃棄物を出さない)資源リサイクル、そしてデジタル撮影技術開発など、自分たちなりに考える各種実験の「アリーナ」でもあった。それが奏功して、通巻六冊で萌芽した方法やコンセプトは、以後の学芸活動で開花、結実することになった。それは出版事業からもたらされた大きな成果であった。また、六冊の発行を通じて外国に送出されたメッセージは、海外から多くの来館者を呼び込む導因となった。現今、かくも大判の、贅沢な「ニュース・レター」はどこを見ても、容易には見つからない。いま、手許にある六冊は、分厚い透明アクリルで造られたボックスのなかに収められている。これを眺めていると、「インターメディアテク」が、すなわち当初思い描いた「ミュージアムを標榜しないミュージアム」の全体が、丸ごとそのボックスにコンパウンドされているように、わたしには感じられてならない。ならば、これをもって「ミュージアム・イン・ボックス」と呼んでみたらどうであろうか。ロサンゼルス北東にあるパサデナ美術館で、ヴィジュアル・アーティストのメイソン・ウィリアムズが一九六〇年代のアメリカン・ポップ・アイコンの一つ、大陸横断グレイハウンド・バスの原寸大版画を折り畳み、小型の段ボール箱に収め、「バス・イン・ボックス」と命名して展示してみせたのは一九六八年のことであった。全体を包摂する一個の箱というコンセプトは、なかなかに魅力的なもののように思えるのであるが、どうであろうか。
西野嘉章(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館特任教授)
Yoshiaki Nishino