昨年秋に「雲の伯爵——富士山と向き合う阿部正直」展の設営のためウプサラ大学博物館「グスタヴィアヌム」へ訪れる機会があった。当時、私はロンドンに滞在していたため、スウェーデンへは飛行機にて2時間程のフライトである。時差の影響もさほど受けず、日本からのメンバーと合流するまでに数時間あったことから、空港からウプサラへ向かう前にストックホルム市内の美術館を訪れた。ストックホルム近代美術館には多くの20世紀前衛作家の作品が並んでいる。中でも「第3インターナショナル記念塔」の建築模型を復元したレプリカは想像以上に大きく、加えて複雑な構造からは100年以上前に構想されたものとは思えない新鮮な印象を受ける。ウラジミール・タトリンによって構想されたこの記念塔が実際に建築されることは無かったが、模型を復元することによって、当時の構想の壮大さを現代に伝えている。このような前衛的な作品を肌に感じつつ、今後の新しい芸術の潮流が北欧の地から生まれる予感さえも感じた。(写真はストックホルム近代美術館)
菊池敏正(東京大学総合研究博物館特任助教)