8月12日より特別展示『アヴェス・ヤポニカエ<9> ––表現のダイヴァーシティ』を開催する。今回取り上げたのは、「鳥類写生図」に見られる表現の幅だ。当初、この企画は「日本画による博物学的描写だって素晴らしいのだ」を意識して始まった。一方、その描きぶりが典型的な日本画とは全く違う点も気になった。時に自分自身が、「リアルに描かれているから上手い」と感じてしまっているのも問題だった。図版としてはリアルな方が良いに決まっているが、絵画としてはリアルだから上手いというものでもないのだ。ピカソやブラックを下手くそとは言わない。身近なところなら、我々が慣れ親しんだ漫画もそうだ。『ガラスの仮面』でもなんでもいいが、あの顔をはかなり生物学的に無理がある。考えてみれば、この粉本には嘴や足指のクローズアップ、ポーズ集なども入っており、さながらアニメの設定資料である。最初から漫画やアニメを想起させるような資料でもあるのだった。
松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Hajime Matsubara