武甲御嶽神社にある、オオカミを象った4体の狛犬(狛狼?)について。4体、すなわち2対がすぐそばに並ぶのも面白いが、オオカミの表現もずいぶん違う。こちらの1対は顔立ちに一般的な狛犬、つまり獅子の面影を残しており、より古いもののようにも見える。前回ご紹介したもう1対はより写実的に「イヌ」っぽい。体つきも今回のものの方が細く、この方が古来日本人の思い描いていたオオカミの姿に近いようにも思える。ニホンオオカミは一応、ハイイロオオカミの亜種(Canis lupus hodophilax)となっているが、その正体はいまだにはっきりしていない。つい最近も、更新世に日本にいた大型のオオカミと、最終氷期に大陸から来たオオカミが交雑し独自に進化したもの、という研究結果が出た。ちなみに亜種名であるhodophilaxとはラテン語で「道を守るもの」ーー山に入った人間を里の領域まで見送ってくれるという、「送り狼」の伝説にちなむ。
松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Hajime Matsubara