本年4月より、インターメディアテクの館長をつとめている西秋です。2013年の開館以降、本施設の発展に尽くされた西野嘉章前館長の甚大なご功績にまずは謝意と敬意を表しつつ、さらなる展開をめざしていきます。最初のHAGAKIですので自己紹介させていただきますと、私はオリエント地域の考古学を専攻しています。1984年のシリア発掘を皮切りに、西はブルガリアから東はウズベキスタンまで中東一帯で毎年のように発掘調査に従事してきました。特に関心をもっているのは現在の文明社会のよってきたるところを、文明発祥の地と言われるオリエントの考古学的証拠をもって解き明かすことにあります。そのため、数十万年前の絶滅人類の時代からメソポタミア古代文明まで、関連するさまざまな遺跡、標本の研究に携わっています。さて、インターメディアテク、和名で言うところの「間メディア実験館」。泥にまみれた考古学と似つかわしくない施設のようにも見えるかも知れませんが、大きな共通点があります。モノは古来、実証物として何にもかえがたいほどの強力なメッセージを発するメディアであり続けてきました。考古学は、そのメッセージを読みとき、インターメディアテクは実物=モノこそを各種メディアの結節点としてメッセージを発信します。メディアの技術や方式が急速に変遷する今日、それらを十分にふまえたうえでなお、実物を基軸としたミュージアムを展開することは今後も新たなチャレンジであり続けるに違いありません。インターメディアテクの試みに、引きつづきのご理解をお願いする次第です。(写真:ウスベキスタンの洞窟調査(左前方が西秋))
西秋良宏(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館館長/教授)
Yoshihiro Nishiaki