モバイルミュージアム『音景夜景 --- トウキョウヘオモイヲハセル』展が始まった。昨年の『粗と密 --- 音景 × コレクション』展に続き、サウンドスケープで変容された空間に展示物を埋め込む試み、第二弾である。地上150mの展望デッキという、博物館とは異なる空間での展示は、挑戦的で好奇心を誘う一方、予想外のことが起こり、困難を極めた。満を持して、ようやく今日、音を出すことができた。東京中の音が集まる東京タワー上空のノイズと、北海道札幌市郊外のすずらん国営公園の鱒見の滝の音を同時に聴いたらどうなるのか。最初のsoundscapeは『S/N ratio Tokyo 二つのノイズの交差』と題したミックスノイズで、人工的な音と自然の音の境界線を問う。都会に住む人間は、没入してしまい、意識することがない騒音。しかし、それらを切り出し、異なる空間へ対立的なノイズと配置することで、改めて意識にのぼってくるであろう。案外ベストマッチかもしれない。
森洋久(東京大学総合研究博物館准教授)
Hirohisa Mori