7月21日より特別展示『からだのかたち2――東大医学解剖学掛図』がスタートした。特別展示『からだのかたち――東大医学解剖学掛図』は、入替えを行いながら1年を通して東京大学医学部で保存されてきた視覚教材を公開している。掛図は、手描きで描かれており解剖学に関わるものだけで約700点にのぼる。初回で23点、2期目で20点を展示している。掛図の正確な制作年代は明らかになっていないが、1800年代後半から1900年代前半の西洋の解剖学書の図版から転写をして図を制作したと推定している。この掛図を制作する転写の方法として、手本にする解剖学書の図の上に等間隔でグリッドを引き、掛図の洋紙にも等間隔でグリッドを引く、そして、元図のグリッド線に交差する図のポイントを押さえていき、ポイントを繋いで全体の図を正確に転写していく。このような描き方で、見事に正確な図に仕上げている。転写のためのうっすらと残るグリッドの痕跡や講義中に指し示したチョーク痕も掛図をじっくり観察すると見えてきて味わい深い。本特別展示の資料体である掛図は、人が筆や絵の具を駆使して描き、解剖図を描く・使うための痕跡や描き手の個性が見え隠れし、また、掛軸という素材感や質感を持ち合わせ、人間味溢れる魅力的な解剖図である。デジタル時代の今だからこそ「手描きの解剖図から享受することとは何か」、この機会に掛図の前で考えてみたい。
上野恵理子(東京大学総合研究博物館特任研究員)