教養前期の「空間デザイン実習」をオンラインで実施した。土曜日3回の集中式授業で、自分でデザインした建築の模型をつくる実習型のプログラムである。初日に建築概論の講義がある。Keys to Architectureと題して、建築、都市、デザインのキイとなるテーマについて話しをする。キイワードの数は当初は90で始まり、現在は120にまで増えた。最新のキイワードは「近接性」である。パワーポイントは全部で528枚あり、これを4時間でこなすので、かなりの高速圧縮型の講義となっている。全体の内容は12のセクションに分かれている。1.西洋建築史、2.日本建築史、3.言葉の喚起(空間/時間/建築・・)、4.建築家列伝(海外編)、5.建築家列伝(国内編)、6.都市の様相、7.居住の形式、8.かたちと力、9.比例と記譜、10.外部への視座、11.映像と情報、である。短時間に広範囲のスライドに接することで、全体的なイメージをつかむこと、自分の関心分野を見出すことへの期待がある。添付画像は西洋建築史と日本建築史のセクションの縮刷版である。ここでは最後のまとめとして、西洋建築は「回帰しつつ前進」、日本建築は「導入しつつ洗練」というダイナミズムを示している。また建築の永遠性について、パルテノンと伊勢神宮を対比している。思考の端緒になるように、このような図式的な問題提起を行っている。授業のメインとなる「次世代建築」の模型制作では、今年も多様な力作が集まった。自然環境との関係の再構築、コロナ禍を経た人間関係の回復を目指す作品が多く見られた。
松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)