夏に向けて特別展を企画中である。日本画に描かれた鳥と剥製を並べて展示するAves Japonicaeも次で7回目、正直に言うと、そろそろネタが苦しくなって来た。もちろん、日本画はまだあるし、見せ方のアイディアもある。だが、問題は手持ちの鳥類標本だ。対応した剥製がないと展示が成立しないのだ。そうやって考えているうちに、このシリーズではまだ、「一巻の絵巻物をただ全て見せる」ということをしていないことに気づいた。そのつもりで見てみると、ある一巻が目的に合いそうである。最晩年の作品なのだが、身近な鳥を淡々と描き、時に舶来の珍しい鳥に夢中になり、ある時はハトの雛を拾ったのだろうか、ヒョイとその絵が挟まる。決して豪華絢爛な作品ではない。この巻に描かれた季節ごとの鳥たち、その鳥を描き続けた画家の静かな日常といったものが、今この激変した我々の日々において、むしろ輝いて見えたのである。時に無為は作為に勝る。決してネタを考えるのが面倒になって丸投げしたわけではない。
松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)