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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

鋭き棘に注意すべし

 インターメディアテク2階[FIRST SIGHT]の壁面に、額装された巨大葉がいくつも展示されている。写真はオニバスの乾燥標本で、近づくとその葉には棘らしきものがみえる。標本作製と額装は東京大学総合研究博物館教員らの手になるもので、2019年の特別展示「メガロマニア植物学」開催時にも複数の巨大葉が整然と並び、ウェブ上では作製工程の艱難の一端が紹介された。ところで、植物学者・三好学の著した『印度馬来熱帯植物奇観』(冨山房/1908年)には、熱帯地方の植物を押し葉にする方法を伝える文章が載っている。それによると、ジャワ島のような多湿な所での植物標本作製においては、日本で行われる乾燥方法では植物が腐敗する恐れがあるため、堅い鉄網に植物を挟み、網の間に多くの吸取紙を入れ、全体を火力で急速に乾燥させるのだという。さらに三好は植物の圧搾方法のみならず、熱帯地方の葉について「鋭き棘を有し、大なる針を備ふるものあるを以て、採集に際して屡々手指を傷くることあり、注意すべし」とも書いている。写真のオニバスの葉の棘も、うっかり手指に刺すとかなり痛いらしい。

藏田愛子(東京大学総合研究博物館研究事業協力者)

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