「図版LXXXIX」の図1、3、4を描いたR.M.は、ウィリアム・カーマイケル・マッキントッシュ(1838-1931)の妹、ロベルタ・マッキントッシュ(1842-1869)であった。それでは、図5を描いたF.B.と図2を描いたA.H.W.は、それぞれどのような人物であったのか。半断面図に各器官が細かく書き込まれている図5は、「F・ブキャナン女史の図より」と説明されているため、引用した図であると推測できる。F・ブキャナン(F.B.)は、図5で描かれているStreblospio shrubsoliiの命名者でもある、動物学者フローレンス・ブキャナン(1867-1931)のことである。ウィリアム・マッキントッシュは、1900年に出版された『総説・英国の環形動物 第1巻第2部』にて支援者の名前を列挙し感謝の意を述べているが、ブキャナンもその中に名を連ねている。図2を描いたA.H.W.ことエイダ・ヒル・ウォーカー(1879-1955)は、『総説・英国の環形動物』のために数多くの図版を描いた。セント・アンドリュースに拠点を置き美術教師をしていたこと、地元の風景画を描いていたことなどが知られているが、詳しいことはあまり分かっていない。どのような経緯でマッキントッシュのために絵を描くことになったのかも不明なようである。ただ、マッキントッシュの故郷がセント・アンドリュースであることが関係しているのかもしれない。
秋篠宮眞子(東京大学総合研究博物館特任研究員)