野外で鳥を観察していて、しばしば出くわす困難がある。それは「何を食べているのかわからない」問題だ。明らかに採餌はしている。何かくわえているし、嘴も動いている。上を向いて「ごくん」と飲み込む動作まで見える。なのに、くわえていたのが何だったかが、わからない。多くの場合、それは小さすぎ、遠すぎ、素早すぎるのである。写真を撮るにも、よい条件で撮影できることは非常に希だ。見つけた瞬間にスナップショットで撮影する場合、ブレていたり、暗かったり、小さすぎたり、フォーカスが甘かったり、角度が悪くて判別できなかったり、と問題は山積している。ここに挙げた写真はなんとか識別できた例で、冬の水田で採餌していたミヤマガラスが、スズメガの蛹をくわえている様子である。これ以外にヨトウガの蛹らしきものやジャンボタニシを食べているのも見た。害鳥扱いされることも多いカラスだが、農業害虫もちゃんと食べているのだ。
松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)