収蔵展示室Studioloは、通常、標本保全のために室内を消灯している。ただし、「覗き込めばうっすらと中に標本の集積が見える」状態にはしてあり、隠れたアイキャッチとして、大型標本も配置してある。代表的なのは山階鳥類研究所所蔵のクマタカだ。クマタカは翼開長が最大170センチほどになる。この標本はそこまでの大きさではないが、150センチは確実に超えている。流木を磨いた台座もどっしりと大きく、それだけでもかなりの重さがある。Studioloのスチールラックには全く収まらない。外に出そうにも、これを収めることが可能なカバーもケースもない。極めて残念なことだが、見事な大きさの剥製なのに、見事すぎて展示に生かすことができないのである。うまい方法を思いつく日まで、収蔵室の主として君臨してもらうよりない。そして、室内で作業している時、目が合うたびに、「おい、出番はまだか?」と言われているようでもある。
松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)