「2020」にしても「二〇二〇」にしても、まさにデザイナー泣かせの綺麗な数字である。滅多にない数字の並ぶ年を、恙なく迎えることができた。まずはそのことを言祝ぎたい。「インターメディアテク」は早いもので七年目を迎えた。初年度を別として、二年目以降、来館者数は高止まりしたまま、ほぼ横這いの状態にある。これは滅多にない現象で、ミュージアムとして誇ってもよい。目立つのは、やはり海外からの来館者である。その動向を知りたいと思い、昨年春から、タッチパネルによる調査を始めた。来館者の自主性に委ねて得られた有効回答は、月毎に千件から二千件。そのデータを基に、海外からの来館者は三割近くに上り、出身地も世界各地に広がっていることがわかった。無料公開施設として安定軌道に乗っていることは実感できる。しかし、事業規模が膨張し、学芸業務が多様化し、ネットワークが拡大するにつれ、ある種の「慣れ」が生じてきている。このままでいたら、マンネリ化が進み、受動的になり、冒険心を失い、臆病になり、結果として、凡百の施設へと転がり落ちてゆくのは早い。そもそもが大学の実験施設として立ち上げられた「インターメディアテク」である。未知への「投企」を怠るようなことになれば、これまで育んできた存在意義など、たちまち雲散霧消してしまうに違いない。いまこそ新たな「シーズ(種)」を蒔かねばならぬ時なのである。それにしても、「オリパラ年」と呼ぶより、「グラフィック・イヤー」とでも命名したくなるような西暦年ではないか。未来に向かうヴィジョンを、眼に見えるかたちで示す、格好の年がやってきた。
西野嘉章(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館特任教授)