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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

名無しのペンギン

 IMTが収蔵する鳥類標本の中に、明治44年に採集されたと考えられるシュレーターペンギンの本剥製がある。この標本は白瀬矗による日本人初の南極探検の際に捕獲され、マスコットとしてしばらく船上で飼育されたが死んでしまったので皮だけを持ち帰り、南極探検を後援していた大隈重信を通じて明治天皇に献上され、その後は皇居にあって生物学御研究所の所蔵となり、1995年に山階鳥類研究所に移管された後、2013年にIMTに寄託されてやって来たが、ある研究家のおかげで由来が判明したのである。2014年に「あるペンギンが辿った歴史」として特別展を行なったが、私としては英語タイトルとして付けた「The History of an Anonymous Penguin(名無しのペンギンの歴史)」の方が気に入っている。標本ラベルには「イワトビペンギン」と記入されていたが、由来がわかったことで採集場所が特定され、その知見に基づいて同定し直した結果、実に102年ぶりに正しい名で呼ぶことができたからである。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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