チョコレート・ダンディーズ、ブルー・デヴィルズ、マッキニーズ・コットン・ピッカーズ、ニューオリンズ・フィートウォーマーズ。初期ジャズにおけるバンドの命名は黒人文化特有の不条理に満ちたユーモアを表している。レコードのラベルに印字された愉快なバンド名を読むと、それが20世紀音楽の行方を変えたとはとうてい思えない。なかでも、とりわけ間抜けな名前を与えられた伝説的なバンドを選ぶなら、迷わず「レッド・オニオン・ジャズ・ベイビーズ」を挙げる。ジャズにおける初の「スーパーグループ」となったこのクインテットの実績は、1924年末にジェネット社が録音した四曲に過ぎない。しかしその顔ぶれは申し分ない。クラレンス・ウィリアムズの企画で、ルイ・アームストロングがコルネット、バスター・ベイリーがクラリネット、リル・アームストロングがピアノを担当している。そして12月22日に吹き込まれた「ケークウォーキング・ベイビーズ」では、シドニー・ベシェがベイリーに代わり、初めてアームストロングと共に録音に臨んだ。初期ジャズの最も個性的な二人のソリストが再びスタジオで顔を合わせるのは1940年のことだった。
大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)