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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

インターメディアテク・レコード・コレクション(1)
「史上初」のジャズ録音

 歴史は「出来事」を好む分野である。音楽史においても同様だ。「ジャズ」はその歴史から、起源も名前自体の由来も不明であって当然。しかし、誰もが合意できる「誕生日」を求める人は少なくない。定説によれば、ニューオリンズの白人オーケストラ「オリジナル・ディキシーランド・ジャス・バンド(ODJB)」が1917年2月26日にニューヨークで吹き込んだヴィクター社18255盤が史上初のジャズ・レコードとされている。その根拠として、レコードのラベルに初めて「ジャズ」(正確には「ジャス」)という単語が載ったことが挙げられる。ところがこのバンドはそれより一ヶ月早い1月30日にすでに二曲を録音しているが、ヴィクター社はそれらをすぐ発売しなかった。そもそも、19世紀末ニューオリンズの黒人やクレオール人の間で誕生したジャズは、白人が動物の叫び声を真似しながら黒人の音楽を演奏するODJBを待たずに、「ラグタイム」や「ブルース」の名ですでに録音されていた。ただ、そのレコードには「ジャズ」という単語が印字されていなかったのである。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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