出版計画のなかには、近く刊行の約束されているものもなくはない。『前衛誌——未来派・ダダ・構成主義』の日本編二冊本がそれである。外国編二冊本を出版してから、すでに一年以上が経ってしまった。二〇世紀の両世界大戦間に実在した前衛芸術運動のネットワークをグローバルな視点から記述し尽くす。その大風呂敷な論題と取り組みを始めたのは、一九九〇年代のことであった。一部は国際芸術センター青森の年報に掲げられており、この連載を創刊以来二十年ものあいだ受け入れ続けてくれている同センターには感謝の言葉もない。書き続け、書き続け、気づいてみると、四百字詰め原稿用紙で五千枚、図版二千点超にもなっていた。出版が具体化するなかで、外国編と日本編の二部構成が現実的であるとの考えに至り、各々をさらにテキストと図版で二分冊化することになった。長い時間を費やした本には強い思い入れもある。装釘をどうするか、悩み始めればきりがない。中身を生かすも殺すも外装しだい。そう思いつつも、やはりエイッ、ヤァーと一気呵成の勢いで、腹を括らざるを得ないのである。
西野嘉章(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館特任教授)